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 金銀糸・平箔とはメニュー

 1.紛(マガイ)という言葉の意味   2.日本における金銀糸・平箔の歴史
 3.金銀糸の品質表示について
 4.引き箔・模様箔のあれこれ
 5.純銀製の金銀糸・平箔の取扱いについて  6.帯地に対すル品質表示のあれこれ
 7.本金箔について  8.切幅の表示について
 9.丸撚り金銀糸の太さの表示について  10.金銀糸・平箔の応用加工品について
 11.特殊な金銀糸・平箔のあれこれ  12.歴史考、紙との出合い
 13.平箔・両面箔について  14.無芯巻加工について
 15.佐賀錦用の箔について  



1.紛(マガイ)という言葉の意味

 金銀糸のにおいて「紛」と言う言葉が多く出てきます。本来その意味は、本物に似せて作られた偽の物
   ということです。現在でも「本紛」「新マガイ」「ソフト紛」等堂々と偽物であると表記して取引がなされてい 
ます。                                                       


 言い訳になるかも知れませんが金糸の原点は「本金」であり、それ以外の物はすべて似せて作られた
 ものであると言う意味が込められているのです。                               

 人々の金銀の輝きにに対する憧憬は永遠の者であり、富と権威の象徴として今日でも不変なのです。
 中でも「本金」は非常に高価なものであり、多くの人がそれを使用したものを手に入れることは出来  
 ません。そこで創意工夫されて出来上がったものが「紛」ものなので。                   

「本紛」は銀を素材とし、それを燻して金色にしたものです。その製造工程は本金と製品を作るのと
変わりなく高度な技術が要求されます。江戸時代には唐箔といわれていました            

現在では中金箔の名で取引されています。燻すことをくすべと言いますが現在では残っていません。


   

さらに銀箔の特性を活かし「焼き箔」と称される変化に富んだ色を醸し出すことも出来ます。勿論着色
加工により多様な色の変化を作ることもできます。                              



  「ソフト紛」は近代の製造技術によるものです。ポリエステルフィルムに金属を真空蒸着させたものです。
 この製法が現在最も広く普及し従来のものと比較して柔らかく、軽く、また保存性にも優れています 。
 金銀の製品を大量につくることを可能にした革新的な製法です                       

「新マガイ」はそれまで箔を一枚ずつ和紙に貼り付けていたものを「ソフト紛」の技法を応用し、和紙に
金属を蒸着することに成功した製品です。                                  

㊟ソフトマガイ・新マガイは尾池工業株式会社の所有する登録商標ですが、
 当組合員はその許諾を受けて使用しています。                 

これらの製品は業界の発展に著しく寄与しました。さらにその開発は製造の過程における技術革新に
大きな影響を与えています。着色工程、貼り合わせ工程、撚糸工程など全てに及んでいます。    
われわれの業界において「紛」という言葉は「にせもの」という意味ではなく、業界発展の礎となり   
広く世の中に金銀の輝きを享受していただくための「新製品」であると思っています。          
伝統的な織物や、高級な織物の中にもその特性を活かした製品が多く使用されています。      
そこのところを是非ご理解して頂きたいと思います。 
                              



2.日本における金銀糸・平箔の歴史

古来、金銀はあらゆる装飾の中でも最高のものとされてきました。金銀の輝きを身にまといたいと  
いう願望はやがて金銀を繊細な糸にして、織物の内外に自在に展開させる金銀糸の創始へと繋が 
っていきます。                                                  

ヨーロッパでは紀元前に薄く展ばし細く切った切金状の金糸が織物に織り込まれていました。    
中国ではこれを絹糸に巻きつけて撚り金糸として用いることもあったと思われます。これが紙と   
出会い誕生したのが箔糸です。                                        

わが国に遺存するものを挙げれば、大阪・高槻の「阿武山古墳」から出土した織冠、法隆寺献納  
宝物「忍冬文繍残片」(七世紀)、正倉院御物中の「金糸刺繍入り羅幡」(八世紀)では、撚り金糸  
が用いられています。また正倉院宝物の綴織(八世紀)の一つには裁断した箔をそのままの状態 
で用いる平金糸が織り込まれています。                                   

これら数少ない出土品や舶載染織品の例から推測されることは、その文様の図柄から隋朝初頭  
には箔糸がすでにあったこと、そして織物には平箔糸、刺繍には表裏のない撚り箔糸と使い分け  
られていたということで                                             

このように金銀糸・平箔の歴史は非常に古い時代に発生しているのですが、その文献はほとんど  
見当たりません。また同様にわが国において、金銀糸・平箔がいつ頃から製造される様になった   
かを知る確かな資料もありません。江戸時代初期までは金糸を輸入していた形跡があります。    

しかし、室町末期に京都に来任したキリシタン宣教師が当地方産の金襴の祭服を着けてミサを   
したことや、上京・西陣の町衆が盂蘭盆会で風流踊りを競い合った時の金襴の衣装が見事であ  
ったということが文献にあり、この時代から流行しはじめた金襴帯や金紗、金銀糸 多用の縫い  、
まで輸入で賄いきれたとは考えにくく、国産の金銀糸との併用があったのではと思われます。    



その後、幕府の統制のもと箔座がおかれます。素材は本金箔から銀箔・真鍮箔・銅箔等広がり   
工夫され用途に応じて発展していきます。それぞれの箔座はやがて統廃合され金銀座管理下に  
組み込まれ、金銀箔の製造は江戸・京都の箔座しか認められなくなりました。             

「金糸屋」の名称の初例は江戸時代になります。超勝院(上京区大宮鞍馬口下ル東入)にある   
「金糸屋甚兵衛」の石碑(延享二年・1745年)です。                            
さらに北野天満宮にある石灯篭(天保十二年・1831年)に「箔屋善兵衛」とあります。        

         

明治時代になると新政府により営業の自由化が認められ、多くの別家、分家があり今日に続く業者が
輩出されました。(参考資料 京都金銀糸平箔史)                              



3金銀糸平箔の品質表示について

 金銀糸平箔は何種類かの素材が複合されて作られています。また用途に応じて多くの品種があります。
 現行の品質表示法ではそれらの構成素材に分類して表記することになっています。例えば最も一般的 
 に用いられて金銀糸はポリエステルフィルムに銀を蒸着し金着色を施してから和紙で補強をし、細く裁断
 してからレーヨン芯に巻きつけていきます。表示的にはポリエステル、指定外繊維紙、レーヨンに分類 
  することになるのです。                                                


気がかりになるのは、悪質な業者が帯地本体の構成繊維の中にポリエステルやレーヨンを混ぜても 
何ら問題にならないことなのです。品質表示で消費者を保護すると言う目的が本末転倒になっている
のではのでは無いのでしょうか・・・・・・・                                    

また品質表示法の指定された素材表記の中において「金銀糸」という用語はありません。今のところ 
 その用語の中で唯一イメージが似ている金属糸という語句を用い(金属糸風)や(金属糸風繊維)という
 表記することしか許されません。(金属糸=金属そのものを細長く圧延し糸状にした製品)
        

さらに問題なのは構成している素材を重視し、金銀糸・平箔の最も重要な部分で、その光沢を作って
   いる金属が何であるを表記しなくても構わないということです。                         

メリット表示として(本金)(プラチナ)などと表示することは許されています。               

またポリエステルフィルムを使用せず、伝統的な技法で作られた本金糸や漆金糸においてもベース 
となる和紙や巻きつけていく芯糸は分けて表示しなくてはなりません。                  

   消費者保護のために作られている品質表示法が、その原則を守ることにこだわり、かって消費者に    
誤解を与えてしまったり、理解しにくい表示になっているのではないかと危惧します。          
加えて申し上げるならば和装製品である帯地や帯締めを世界基準である品質表示法の枠内に入れ 
 ようとすること事態に無理があるのではないかと思います。                          

京都金銀糸組合としては納得のしがたい表示方法です。しかしながらも長年にわたり金銀糸という  
ものが特殊なものであり、世の中にごく一部のものしか関わっておらず広く世の中に認知されていな 
かったのも事実です。                                               

流通の取扱い業者において虚偽の説明をすることが多くあったとも聞き及んでいます。当組合では  
現行の品質表示法の中で、できるだけ消費者の方にご理解をいあただける表記をしていただくよう  
各製造メーカーにお願いをしております。                                    

 また将来的には金銀糸平箔(〇〇%・〇〇%・・)のような固有の存在を認めていただければ願って   
います。                                                       
                                                         



4.引箔・模様箔・柄箔のあれこれ

平箔の代表的なものとして、一般的には引箔・模様箔・柄箔と称されるものがあります。金銀箔を目止
めした和紙に押上げて細く裁断し、芯糸に撚らず平箔のまま織り込む技法は西陣古来のものです  

金銀糸を含む全ての緯糸は経糸の間を通して織り上げるのですが、平箔の場合は扁平で表裏が  
あるため、一本ずつヘラに引っかけて引っ張る事により織り上げます。この作業の技法から「引箔」 
という呼び名が生まれました。                                         

  

この箔が明治末期から
切箔や砂子箔を散らして次第にデザイン化され、大正時代には漆やラッカー
など の着色塗料を用いて和紙に直接彩色した図柄を描くようになりました。模様箔・柄箔と称される 
ようになりました。                                                 

模様箔がいつ頃から始まったのかは不明です。おそらく明治の後期からではと思われます。模様箔は
刺繍帯地の地模様として多く利用されました。                                 

模様箔においてその文様は実際の図柄よりもタテ・ヨコの比率を扁平に描かなければなりません。  
織物に織り込まれる時には箔だけではなく地組織の緯糸も織り込まれます。その緯糸の分だけ図柄は
タテ方向に延びていくからで                                           

また帯地一本を作るのにおおよそ五枚の引箔を必要とします。各引箔の天地の模様は違和感のない
様に繋がっていなければなりません。色や模様、金銀の散らし具合など細心の注意を払って一つの 
意匠として 帯が仕上がるのです。                                       

模様箔のサンプル


  

裁断された模様箔

  



5.純銀製の金銀糸・平箔の取扱いについて


金銀糸・平箔において現在では純銀ベースのものが多く使用されています。純銀はその性質上硫黄
含有物により化学変化(硫化現象)を起こし黄変から黒変へと変色していきます。(純銀の装飾品、
食器などと同様です)                                              

このような化学変化を出来る限り防止するために、業界では製造時にコーティング等の加工を施して
いますが、完全に硫化反応を防ぐということは残念ながらできません。                  

このような事故を未然に防ぐために純銀を用いた製品は、お取り扱い中または保存中に十分な配慮
をしていただきますようお願いいたします。                                  


◆一般的に考えられる注意事項

・ゴム製品、印肉、粗製油、スポンジ等の硫黄添加物との接触を避けて下さい。       
・防虫剤は一種類にして下さい。(化学反応で硫黄系のガスが発生する可能性があります)
・化粧水や洗剤、漂白剤のついた手、油、汗、にまみれた手で触らないで下さい。      
・粗悪な紙類(再生段ボール等)との接触を避けて下さい。                   

・合成木材(ベニヤ板)との接触を避けて下さい。接着剤に反応することがあります。    
・高温多湿になる場所での保管は避けて下さい。湿気が硫化反応を促進させます。     
・通気性を良くし、ナイロン、ビニール等で包んで保管しないで下さい。            
・自動車の排気ガス、石油ストーブの排出物にもご注意下さい。                
・日光の直射、スポットライト等の照明で長時間の照射は避けて下さい。           

・その他身近なものでも影響を及ぼすことがあります。(繊維技術センター検証例)     
       シャンプー目薬、パーマ液、白髪染めジェル、スホーツドリンク、漂白剤、接着剤
・硫黄系の温泉地域では硫化反応を引き起こす可能性があります。             


また、アルミニウムをベースとした金銀糸・平箔の場合は、強度の酸性やアルカリ性の物質に反応し、
アルミ抜けといわれる現象を引き起こします。金属光沢を失います。                   

生活様式は刻々と複雑に多様化しています。反応を引き起こす物質はまだまだあるかと思われます。
何分このような点につきまして十分にご留意されますようお願いいたします。               




6.帯地に対する品質のあれこれ

 家庭用品質表示法における考え方を説明します。品質表示法において混乱や誤解を生じさせないよう、
 あらかじめ決められた用語を使用しなければなりません。また表示の方法も決められています。具体的
 な例をあげてみたいと思います。                                         

   現在使用されている金銀糸・平箔は純銀、もしくはアルミニウムをポリエステルフィルムに蒸着したものが
  多くあります。それらに紙を貼り、細くスリットして撚り上げたものや両面に貼り合わせてスリットしたのが
  主になります。現行法においてはベースとなるポリエステル、紙の他、撚り上げる芯糸の種類(レーヨン、
ポリエステル、ナイロン、絹等)に分類しなければなりません。
                        
   金銀糸・平箔ではその構成成分が重要であり、金属の種類やその重さ、貼り合わせ糊の重さ、着色染料 
  の重さを表記する必要がありません。ただしメリット表示を行う場合は枠外に表記することが許されてい
  ます。                                                         

  また帯地においてはその多様さから、全体表示、分類表示、特殊な表示ができます。色々な例が考えら
  れますが主な表示例を下に記します。                                      

一、〇〇%以上、〇〇%以下の表示(特殊な表示)                             

組成繊維中いずれか一種類の繊維の混用率が80%を越える繊維製品については、その繊維の名称
を示す用語とその混用栗数値に「以上」と付記して併記し、その他の繊維の名称を示す用語を一括し
て記載し、これにそれらの繊維の混用率を合計した数値に「未満」と付記したものを表示することがで
きる。                                                        

◆表示例◆          絹                       85%以上
ポリエステル     )
                 レーヨン        )          15%未満
指定外繊維(紙)  )

             (ポリエステル・レーヨン・指定外繊維(紙)は金属糸風繊維です)



ニ、10%未満のの繊維が二種類以上含まれるの表示(特殊な表示                 

 組成繊維中、混用率が10%未満の繊維が二種類以上含まれている繊維製品についてはそれらの繊維
の名称を示す用語を一括して記載し、これにそれらの混用率を合計した数値を併記し、その他の繊維
の名称を示す用語にその繊維の混用率を示す数値をそれぞれに併記して表示することができる。  

◆表示例◆        絹                   75%
    ポリエステル    )
                レーヨン       )        25%
     指定外繊維(紙)  )

       (上記絹以外の繊維は金属糸繊維を構成しています)

 


三、分離表示例                                                                          

製品の部位を分離してわかりやすく示し、それぞれの部位について当該部位の組成繊維であるすべて
の繊維の名称を示す用語に、それぞれの繊維の当該部位の組成繊維全体に対する混用率を百分率 
(%)で示す数値を併記して表示する方法。分け方に特に決まりはないが、分けた部位をわかりやすく 
書く必要がある。                                                  

◆表示例◆    地糸       絹            100%
           柄糸       絹             50%
                     ポリエステル      20%
                     レーヨン          20%
                     指定外繊維(紙)    10%



四、その他の注意事項                                             

<指定外繊維の表記について>                            

◇必ず( )内に指定用語を記すこと                       
◇指定外繊維と( )ない表示は同列に表記すること             
        ◇指定外繊維と( )内は一種類のみとすること。二種類の場合は二列に表記すること。


<指定用語について>                                 

◇指定用語には商標以外の用語を付記したはならない。          
                 (芯糸)(フィルム)(引き箔)は認められない。

 
<(金属糸風)(金属糸風繊維)の表記と表記位置について>          
 

◇任意表示のため品質表示枠内に表記してはならない           
◇品質表示枠と離し枠外に(金属糸風繊維とは〇〇、△△、□□で構成 
されています)と構成繊維の表記をするか、もしくは(上記以外の繊維
 は金属糸風繊維を構成しています)表示することができる 
      
 


上記は西陣織工業組合と京都金銀糸工業協同組合が経済産業省の指導を受け、消費者
に判りやすい表示であるとしたものです。




7.本金箔について

金に銀や銅を混ぜることは早くから行われていました。現在のように箔打ち技術が高度に発達し 
一万分の一ミリにまで打ち延ばせるようになると、箔をはさむ打ち紙に金箔が付着してしまうため 
に、銀や銅を混ぜて強度をもたせなければなりません。                         

そうした機能上の問題は別としても、金はいつの時代においても常に高価であり用途に応じる   
ことはもちろん、様々なデザインを追及することも含め、銀との合金が用いられてきました。    

銀の混入度が高くなるほど金色は青味をおびてきます。純金を”赤金”と呼ぶのに対して”青金”と 
呼ばれます。                                                  

以下は石川県箔商工業協同組合の製造規格です

  白金(Pt)  金(Au)  銀(Ag)   銅(Cu)
白金箔   99.7%以上  ~  ~  ~
 五毛色  ~  98.912%  0.495%  0.593%
 一号色  ~ 97.66%   1.35% 0.97% 
 二号色  ~  96.72%  2.60%  0.67%
 三号色  ~ 95.79%   3.53%  0.67%
 四号色  ~  94.43%  4.90% 0.66% 
 三歩色  ~  75.53% 24.46%  ~ 

    



 
8.切幅の表示について

金銀糸・平箔の製品の規格の一つにその箔の切幅を示すことがあります。各製品は主に織物に  
使用されます。その織物の生地の風合いやデザイン性を求めで切幅を変化させる必要があります。

金銀糸の業界においては通常「〇〇切り」と表現して取引を行います。これは曲尺(かねじゃく)   
一寸(3.03mm)巾の間を何本に切るかという意味になります。                      
おおよその換算表を示します。
                                  

 切り巾(本数) 曲尺(かねじゃく)   ミリ(mm)
200  0.005   0.15
 150  0.0066  0.2
 100  0.084  0.254
 90  0.01  0.3
 90  0.011  0.337
 70  0.0143  0.433
 50  0.02  0.6
 30  0.033  1.0


西陣織帯地には90~120切のもの(平箔の場合)がよく使用されています
また、丸撚りの金糸おいて一般的なものでは65~75切に箔を切り撚糸します。

引箔(模様箔)や伝統的技法の金糸は”ギロチン”という包丁切りで行います


  


ポリエステルフィルムを使った製品の場合は”マイクロスリッター”できります。

   




9.丸撚り金銀糸の太さの表示について


  丸撚り金銀糸の太さを表示するために「掛(かけ)」という呼称が使用されます。「掛」は一束(そく=長さ)
  、一匁(もんめ=重さ)が一掛です。一束とは糸枠・四尺二寸(1.27m)を100回転させて仕上げたものです。

一匁は尺貫法でおおよそ3.75gです。ですから、およそ127mで37.5gのものが一掛です。以下、127m
で75gのものが二掛となります。これは伝統的な技法による製品、例えば本金糸、本銀糸の時代に 
定められた基準です。(1000mあたり29.5gになります)                           



ポリエステルフィルムに金属蒸着の製品が主である現在では正確に当てはまらない基準となります。
また取り引きの基準も西陣地域では1000mや10000m等長さ単位でいくらであるととか、洋装、服地
、輸出等においては1kgや1ポンド等重さ単位でいくらであるということになっています。        
現在の製品でも一掛、1000mがおおよそ26gから32gのものがあります。そこそこの範囲で踏襲され
ています。(金銀糸にJIS規格はありませんので各業者によって少しずつの違いが存在します。)               



一掛よりも細いものは「分(ふん)」と言う呼称を使います。二分、三分、五分、八分などがあります。
一掛より太いものは二掛、二掛半、三掛、四掛と続き 十八掛、二十掛ぐらいまであり、二分から  
五掛ぐらいのものは主に織物の経糸や緯糸に使われ、六掛以上の太いものは刺繍やフリンジに  
用いられることが多いと思われます。                                     

芯糸に使用される繊維には絹、レーヨン、キュプラ、ナイロン、アクリル、スフ等があります。    

画像は本金糸のサンプル(一束=1000mを束ねたものです。高価なものなので一束を10m単位  
に分けられる仕様になっています
。                                

  




10.金銀糸平箔の応用加工品のあれこれ

金銀糸・平箔は製品として出来上がったものをそのまま使うだけではありません。金糸を複数本合わ
せて撚ったり、他の素材と合わせて撚ったりもします。様々な 例を紹介します。            
                

一般的に金銀糸・箔といっても光っているものばかりではありません。透明のフィルムそのまま使っ
  たり、金属蒸着をせずカラーフィルムに仕上げたりオーロラ発色をするコーティングを施したりもします。

下記の例では同じものを合わせることもあれば、別の色のもの合わせたり、全く 違った品種のものを
合わせたり、その製品の広がりは数え切れません。                             

<二本撚り・三本撚り・・・・> 



複数本の金糸を合わせて撚ることでボリュウムが作られることはもちろん表面光沢も乱反射が生まれ
ます。綴れ織や帛紗などによく使われます。                                  


<金銀糸の杢糸>

 絹糸と金糸を合わせて撚ります。これも綴れ地によく使われますが、金糸の合わせ撚りにくらべ落着き
があり柔らかい光沢の織物になります。明綴などに用いられます。                    


<金銀箔の杢糸><その他の箔の杢糸>



絹糸と100~200切の箔を合わせて撚ります。織物の地抜きによく使われます。  
金銀糸の杢糸に比べ細かな砂子状の光沢をかもしだします。200切の箔を使用する
場合は最初に糸と箔を下撚りし、出来上がったものにさらに糸を上撚りします。    
下撚りの糸の太細、糸本数の多少、撚り回数の加減また同じく上撚りの様々な    
テクニックでその表現を変化させていきます。                       
(画像の左は絹糸と200切りの銀箔を。中の二本はレーヨンの色金糸と200切の  
金箔を。右はレーヨンの白生金糸と120切のオーロラ箔を杢にしたものです
       


<ラメ糸>

一般的に多く見られるものとしては羽衣と言われるものがあります。キュプラやレーヨン
と130切程度の箔を合わせて撚ります。用途は多方面にわたっています。       
また金銀糸と200切程度の箔を撚り合わせることもあります。金銀糸の光沢の上に 
さらに箔の光沢が加わりキラキラとした表現になります。
                      
    

(左側の画像は色金糸・黒金糸・白金糸に200切の金銀の箔をあわせたもの)
右側の画像は色金糸や色箔に金箔やオーロラの箔をあわせたもの)



<箔撚り>
平箔に撚りをかけて使用します。一本のみを空よりしたり、二本に合わせて撚ったりし
ます。テープ状のものを撚り上げるのですからもちろん乱反射します。         
色の異なるものを何本か合わせると複雑な色の変化が出来ます。
             
    


(左の画像は異なる三色の箔を掛け合わせたものです)
(右側の画像は20~30切りの薄い箔を空撚りしたものです)




11.特殊な金銀糸・平箔のいろいろ


  通常金銀糸は細い糸に箔を巻きつけて撚り上げたものがほとんどです。しかしながら
織物や刺繍、組紐等のデザイン性の要求から様々なものが作られてきました。  
同じような形状でも金銀以外のものや金銀に手を加えて変化させたりします。   
撚りの方法を変えたり、芯糸を変えたりもします。同じように見えていても素材を  
変えて機能性に優れたものもあります。ここで紹介するいくつかの製品や技法は 
すべて重複するものであり、その多様性は無限になります。当然平箔においても 
同様の技法があります。主なものをここで紹介します。                

◆表面に変化を持たせているもの

 
<色金糸>                                               
金属ベースに色の三原色を用いて着色するわけですから、黄以外の赤や青を多く
配合すればカラー着色になります。絵具を混ぜて色を作るのと同様の
       

(左の4本は通常光沢の色金糸、右の1本は錆びの色金糸です)

<錆金糸> 
                                          
金銀糸でありながらあえてその光沢を必要としないものもあります。着色工程の
最終、表面に錆コートを施します

                      


(左3本は和紙タイプの錆金糸、右の二本はフィルムタイプの錆金糸です)


<古代金糸>                                          
      
 綺麗な色ばかりが金銀糸ではありません。着色の時あえて黒っぽく濁った色を混ぜて    
古代色にすることもあります。
                                        

(左2本はフィルムタイプの錆びの四掛、3本目は光の四掛、右は和紙タイプの一掛です)


<ラテン金糸>                                                
名称の言われは判らないのですが、着色の時に何色かの色を 塗り分けます。手作業
のもあれば、版型を用いて機械で着色する
こともあります。使用する色によって表情に
変化が表れます
                                  

(版型を用いて多色刷りされたものです)


<生金糸>                                                   
透明のポリエステルフィルムをそのまま利用します。透明ですから芯糸の染色技法
がそのまま表現されます。                                       


<パスター砂子金糸                                        
  ポリエステルフィルムに砂子の型版を用い接着剤をぬります。それから転写用の金属
   フィルムと合わせ、砂子状のに光るフィルムを作ります。透明の部分からは芯糸の色 
が透けて見え金銀の光沢が砂子に見えます。
                         

(カラーに見えているのは芯糸のレーヨンの色です)


<漆金糸(ラッカー金糸)>                            
色漆を用い、和紙をベースとして作ります。漆の中に顔料を混ぜ本金糸と同じよう
に作ります。古くから漆は使われています。金銀の光沢はありませんが形状は 
金銀糸と同じです。色糸では出せない光沢感とボリュウムがあります。      
漆の上に金砂子 転写した漆金砂子もあります。
                     
 

(画像左3本は色漆に金の砂子を転写したもの。右の1  本は黒漆の無地です)


同様に色ラッカーを用いて金糸を作ることもあります。ラッカーの
場合はフィルムに着色することもあります。


 
画像はフィルムタイプのものに色ラッカーを着色し金の砂子を転写したものです)


<焼き金糸>
                                          
引き箔の処でも紹介しましたが銀を押し上げたベースのものに硫黄分を含んだ
布や紙を押し当てアイロンで熱を加えて変色させます。その分量や熱加減で色々
な変化を持たせた焼き箔が出来上がります。微妙な加減で色が変化し同じもの
を作るのは非常にこんなんです。                           


◆芯糸や技法で変化を持たせているもの◆
<紬金糸>                                           
芯糸に絹や綿の紬の糸を使用します。手紡糸された糸は細い部分やふわっと
膨らんだ太い部分があります。これらを芯糸に使用しますと細い部分は撚り口
がつまり、太い部分は撚り口に大きな隙間が生まれます。芯糸のランダムな 
形状がそのまま活かされたお洒落感が生まれます。

                 



<芯糸の無い金糸>                                      
金銀糸は何か対象物に箔を巻きつけることで製品に仕上がります。しかし近年
 になり少しでも軽い金糸が重宝されるようになってきました。そこで出来たものが
金銀糸の重量の約半分を占める芯糸を省くということでした。芯糸(添うもの)が
ないので ギザギザとした表面になります。 
        
              



<蛇腹撚り金糸>                                        
箔を芯糸に撚り上げるとき通常は隙間を開けずに撚りますが、機械の巻き上げ
速度を速めたり、通常よりも細い箔を使うことで一定の隙間を作ります。    
芯糸の色や素材が箔の隙間から表れます。                    
芯糸の代わりに両面平箔を用いることもあります。平箔を用いた場合箔は平箔
の形状の影響を受け角ばった金糸になります。
 
                    



<ハート撚り金糸>                                       
芯糸にカベ撚りさせた糸を使用します。カベ撚りとは細い糸に多くの下撚りを  
入れておきます。その糸に太い糸を逆方向に撚り合せます。そうすることで   
太い糸は細い糸の外側に螺旋階段のように巻き付いていきます。        
このゴツゴツした状態の糸に箔を撚るとのこぎりの刃のようなギザギザとした 
金糸になります。                                     





12.歴史考/紙との出合い

金銀糸・平箔が今日の形状に至るまでは様々な変遷を経てきています。その中で 
紙との出会いを無視するわけにはいきません。紙の発明は文明の様々な分野に 
大きな発展をもたらしましたが、金銀糸の発展にとっても大きな影響を及ぼしてき 
ました。                                            

 古来金銀の装飾を施すにあたり、まずはそのものを板状にし縫い付けることから   
始まったと思われます。それからさらに薄く打ち延ばし切り金状にしたものを織り 
込むようになっていきました。中国ではこの切り金状のものを絹糸に巻きつけて  
撚り金糸として用いることもあった思われます。                     

やがて紙を漉くという技法が生まれ、この漉き紙に薄い金箔を貼り細く裁断して   
糸状にしたものが”箔糸”です。箔糸はそれまでの切り金上の金銀糸とは違って  
箔の薄さを保つことが出来、織物の風合いや、しなやかな絹糸に良く馴染む事   
が出来たのです。残念ながら箔糸がいつ頃出来たのかはよく判りません。     

貼り付ける紙や接着の技法は様々な創意・工夫を経て発展していきます。耐熱性 
防湿性、耐久性、表面光沢を追及する緻密性、改良を重ね洗練度を加えて近代に
至っています。                                        

明治時代になり近代化が進みます。金銀糸・箔の業界は西陣織の発展によって  
急速に促進されることになりました。ジャカード機の普及により、需要は急速に   
増加していきます。金銀箔はもとより明治時代に開発された安価な錫箔は大量  
生産を促しました。分業化・機械化は各々の工程にいちだんと磨きをかけること  
になります。                                         

明治~大正時代に移りゆくなか、模造金銀糸(マガイ)の開発、輸出貿易の始まり 
など、需要に拍車がかかるにもかかわらず紙は手漉きのままです。技術を要する 
手漉き紙を簡単に増産するわけにはいきません。このような時、金糸用の和紙を 
機械で漉くことが出来るようになりました。大正8~9年ごろです。          


当初は雁皮、三椏を主に製造されていました。(紙幣に用いられている成分とほぼ 
同じです) のちに三椏を主に少量のマニラ麻を用いるようになりました。そして   
さらに研究・開発がなされ今日の真空蒸着製法にまで至っています。
          



13.平箔・両面箔について

平箔と呼ばれるものには引箔(片面)と両面箔があります。               

 両面箔がいつ頃開発されたか詳しい資料は残っていません。西陣織が手織りから  
ジャカード織りに発展していく段階でその需要に応じて作られてきたと思われます。

西陣の業界ではコマ箔とも呼ばれています。通常一般的に用いられるものは90切 
から120切ぐらいのものがほとんどです。しかしながら用途に応じて10切や200切 
のものも使われます。                                    

引箔が人の手や自動引箔織機という特殊な機械で取り扱われるのに対して両面箔
は管に巻き取られ杼(シャトル)に装填して使用されます。(現在では直接管に巻く 
のではなく無芯巻という下ごしらえして杼に装填します)  *別項目で説明します。

様々な種類のものがありますが、当然引箔で表現される素材や色に準じて作られて
いったと思われます。                                     
ジャカード織機で大量生産するには両面箔の方が重宝されるからです。丸撚りの金
糸とは違った意匠表現が可能になります。                        
    

多くの品種が存在します。主なものを紹介します。                    

金箔・銀箔・色箔(漆・ラッカー)・砂子箔(粒の大きさは様々)エルジー箔・パール箔
ムラ箔・焼き箔・ダイヤ箔・パスタ―箔等。                        
もちろん本金箔(和紙漆仕様・フィルム蒸着仕様)もあります。            
それぞれに光沢の有無、太さ(切巾)の大小、それぞれの重複仕様、無数にあり 
ます。数えることはできないと思います。                        

  緞帳や大きなタペストリーに用いられるものは5切や10切などの太いものもあります。

150切や200切の細いものは絹糸や金銀糸・両面箔と絡めて杢糸として使われる
ことがおおくあります。                                   

ごく薄いフィルムに蒸着・着色糸し、20切や30切など太く切って撚糸をしフワフワ
したものもあります。軽い織物が重宝されるこの頃、芯の無い金糸も含めて、次々
と新製品が開発されてきています。                           
                            
              


14.無芯巻加工について

金銀糸の種類の中に両面平箔があります。両面箔は通常1000m~3000mをプラス
チックボビンに巻かれています。                              


これを杼に装着する管に巻き替えて織り上げるのですが、そのまま使用すると製織
時に箔が何度もひっくり返り織物の表面が綺麗になりません。            
管に巻いた箔を引っ張り出すとかなりのよじれが発生します。そこで管巻をする前に
無芯状に箔を巻いておきます。円柱状の中央のから出てくる箔は回転しながら出て
来るのでよじれにくいのです。                               
  

このような機械で作業をします。1000mの箔で素材によりますが20個から50個ほど
できます。                                            
  


15.佐賀錦用の箔について

佐賀錦は金銀の箔糸を経糸(タテイト)に用いた織物です。              

江戸時代今の佐賀県、鹿島藩鍋島家で発案され発展したものを西陣織の帯地応用
した織物です。                                        

 和紙の箔が主であった時代は引箔と同様に片面のものが用いられ、切巾も50切前後
 だったと思われます。                                     

  ポリエステルフィルム仕様になると強度が著しく増し、細く切っても経糸として使える様
  になってきました。今では両面箔の100切ぐらいまで対応できるようになっています。 

初期の頃は金銀の無地のものばかりでしたが、印刷技術の発展に伴い柄や、砂子
献上ぼかしまで表裏で合わせることができるようになりました。製織時に箔が裏返っ
ても不具合にならないのです。 
                              
  

  



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